しゃべってないで書いたら日記〜店主の身に起きたことそのまんま日記〜
2017年11月02日
ぼんやりのパワー
去年まで店をやっていた。場所は北白川の有名な本屋さん、ガケ書房さんの真向かいだった。物件を見つけた時、本が好きなので嬉しかったのと、人気の本屋さんの前だからコーヒーを出したら飲みに来てくれる人がたくさんいるかもしれんと、皮算用したものだ。そうしたらガケ書房の店主、山下さんが「コラボしましょう」と言ってくださり、ガケ書房で本を買った方はレシート見せてくださったらドリンク100円引きというのをやって、オープン間もない新参者にとっては嬉しい宣伝効果となった。
が、しかし、宣伝効果も虚しくまあまあ暇な日々。店番をしながらうっかり寝てしまうほど、ぼんやりすることが多くなった。暇なあいだに掃除をしよう、と張り切っていたのは最初のうち。基本毎日暇だから狭いお店でそう掃除もしてられない。仕込みでもしたら良さそうなもんですが、カフェをオープンしておいてなんですが、厨房で自分が何かを作るというのがなんでか知りませんが考えられないくらいのプレッシャー・・・。これについてはまたの機会に。読書でもしたらよさそうなもんだが自分の店って全然集中出来ない。
そんなわけでカウンターに頬杖ついて、道行く人を眺めながらぼんやりすることが多くなった。ぼんやりを積み重ね、時は流れて、ガケ書房さんはホホホ座さんになってお引越しされ、スコホはお店を畳み、私は時々ホホホ座さんに本を買いに行く。
先日、ミロコマチコさんの「ホロホロチョウのよる」という本を読んでいたら、20代の頃、ミロコさんのまわりで事故が頻発し、占いの人に見てもらったら「あんた、ぼんやりしていたらあかん!」と一喝されたいう話があった。ミロコさんがぼんやりしているからまわりで事故が頻発する、というのだ。それを読んでハッとなった。
あの暇なお店時代にも似たようなことが・・・。
①こんなことがあった。斜め向かいの眼鏡屋さん、つまりガケ書房さんのお隣は全面ガラス張りの眼鏡屋さんなのだけれど、お客さんがパーキングから車を出そうとして誤ってバックでアクセルを踏み込んでしまい、思い切り店舗に突っ込み、ガラガラガッシャーン!大音量とともにガラスが全部見事に割れた。私は一部始終を目撃。驚いて表に飛び出したら、ガケ書房から山下さんも飛び出してきた。眼鏡屋さんの惨状を確かめ、怪我人がなくてよかったと安心し、北白川通りを挟んで向かい合って「びっくりしましたね」と言い合った。
②こんなこともあった。うちの店の目の前のガードレールに結構な勢いでワンボックスカーが突っ込んできて激突!シューシューという怪しげな音とともにエンジンから煙が出てきた。運転手は若いお兄ちゃん。フラフラしながら出てきた。隣のラーメン屋さんが「エンジン切れ!」と叫び、ハッとなってエンジンを切ったような有様。車はデイサービスの送迎車で、後部座席にはパニックになったお年寄りが5人、外に出ようともがいておられた。あれよあれよと救急車が来て消防車まで来て、「すみません、お店をお借りします!」、あっという間にうちの店は救護所となり、お年寄りたちが担架で運ばれてきて床に寝かされていった。皆さん怯えきって震えておられる姿に私は俄か救護員と化し、「もう大丈夫ですからね!」と太鼓判を押しながら皆さんの手を握りしめたり背中をさすったりした。近所から沢山見物人がやってきて店は大賑わい。しかし、ものは一つも売れなかった。
③こんなこともあった。うちの店の前(ということはガケ書房さんの前でもある)に信号があるのだれど、なぜか店の周り100メートルくらいの範囲だけ停電となり、信号も動かない。信号が一つなくなると、道路は結構スリル満点となる。見ていてハラハラした。すぐにお巡りさんがやってきて道路の真ん中で手旗信号マンとなった。謎の停電は3時間続いて、私は冷蔵庫の心配をしてハラハラだった。この時も山下さんと道を隔てて「困りますねえ」と言い合った。
このあいだ、ホホホ座さんに行って山下さんに、「北白川の時はかなりぼんやり店番をしていた」と話すと、「僕も相当ぼんやりしてましたよ、ぼんやりなら負けませんよ」とおっしゃる。私はミロコさんの本からの一連の思い出話をした。そして「あれって私か山下さんか、どっちかのせいですよね」と言った。すると山下さんは「僕は②は知らなかったです」とおっしゃった。横で聞いていたホホホ座さんスタッフのMちゃんが「なすりつけあい」とつぶやいた。